「親が糖尿病」だと自分も糖尿病になるの?遺伝と糖尿病の関係

糖尿病と遺伝

糖尿病の発症原因は生活習慣だけでなく「糖尿病になりやすい遺伝子」が存在し、さまざまな要因が複雑に関連した結果、糖尿病を発症することが明らかになってきました。
詳しく解説します。

医学の進歩が解き明かす糖尿病と遺伝子の関係 

2型糖糖尿病や1型糖尿病・MODYの原因となる遺伝子の多くは、膵臓の働きやインスリンの分泌に重要な役割を担っています。
遺伝子の一部が変性してしまうと膵臓の働きが悪くなったり、インスリンが正常に分泌されなくなったりします。
その結果、膵臓の働きが十分でない状態が続き、糖尿病を発症する確率が高くなってしまうのです。

糖尿病になりやすい遺伝子は遺伝する?しない?

「糖尿病になりやすい遺伝子」は遺伝する可能性があります。
しかし、その遺伝子を持っているからといって絶対に糖尿病になるわけではありません。
その理由は、糖尿病はいくつかの遺伝要因に環境要因などさまざまな要因が加わって発症する多因子疾患と考えられているからです。
ゲノム解析の結果から多くの糖尿病は「多因子遺伝」が原因で発症することが解明されていますが「単一遺伝子」の異常でおこる糖尿病もあります。
たとえば、MODY(maturity onset diabetes of the young)は糖尿病患者の約1〜3%しかいない珍しいタイプの糖尿病です。
しかし両親のどちらかがMODYであれば、子供は1/2以上の確率で糖尿病を発症する単一遺伝子の異常で起こる糖尿病であることがわかっています。
また2022年9月時点の報告では、2型糖尿病や1型糖尿病については遺伝する確率や、糖尿病を発症する確率については明らかになっていません。

「糖尿病になりやすい遺伝子を持っているか」を知る方法

「糖尿病になりやすい遺伝子を持っているの?」
「親から糖尿病が遺伝したかもしれない」

この記事をお読みの方の中には、自分が糖尿病になりやすい遺伝子を持っているか心配な方も多いでしょう。

糖尿病の遺伝子診断は、少し特殊な検査です。街のクリニックではなく一部の限られた病院でしか実施できません。
インターネットを調べると「糖尿病のリスクを判定する」という遺伝子検査が複数見つかります。
”どの遺伝子を調べるのか”や”調べた結果をどのように解釈し治療するのか”が、明確になっていないケースも少なくありません。
また、糖尿病リスクが判明したあとのフォローがないケースがほとんどです。
糖尿病に関する遺伝子検査を希望される方は、必ずかかりつけ医に相談するようにしましょう。
またMODYなどの血縁間で遺伝する確率が高い糖尿病患者さんは、遺伝子検査だけでなく遺伝カウンセリングも受け、病気について正しく理解してください。  
また2022年9月時点では、糖尿病に関連した遺伝子検査は保険診療扱いにはならず自費での検査になります。
MODYの場合には5万円前後の検査費用に加えて診察料がかかります。

遺伝した糖尿病を発症させない方法はある?

遺伝した糖尿病を絶対に発症させない方法はありません。
なぜなら糖尿病は遺伝子だけで発症する病気ではなく、さまざまな要因が関連して発症する病気だからです。
さらに「糖尿病を発症するリスクが高くなる遺伝子」は発見されていても、なぜその遺伝子が変異してしまうのか、変異してどれくらいたつと糖尿病を発症するのかなど詳しいことが明らかになっていません。
しかし、糖尿病を発症しやすい遺伝子を持っている人が生活習慣や肥満に注意し「糖尿病にならないようにする」ことは可能です。
もし、糖尿病になりやすい遺伝子を持っている可能性があるなら、規則正しい生活や適度な運動を心がけましょう。

糖尿病と遺伝の最新データ

ここからは日本人の95%を占める2型糖尿病、子どもに多く発症する1型糖尿病、高い確率で家族間で遺伝するMODYについて、2022年9月時点の最新の論文データを元にまとめました。

2型糖尿病

2型糖尿病の多くは生活習慣や肥満で発症すると考えられていました。
また、日本人などアジア人は欧米人よりも軽度の肥満で2型糖尿病を発症しやすい特徴があります。
その原因は「日本人の膵臓のβ細胞が欧米人より弱いから」と考えられていましたが、なぜ弱いのかは明らかになっていませんでした。
近年遺伝子の解明が進み日本人の糖尿病のなりやすさも遺伝子が関係していることを、神戸大学が2020年に世界で初めて解明しました。
具体的には以下が報告されています。

日本人糖尿病患者糖尿病遺伝子の1つであるEIF2AK4遺伝子のDNA配列が一部異なっていると、以下の状態が起こることが研究で明らかになった。
①インスリンを分泌する能力が低下する
②さらに、身長あたりの体重が重くなるほど、インスリン分泌能力低下する

現在、どれくらいの日本人がこの遺伝子を持っているのか、どれくらいの頻度で遺伝するのか、他の原因遺伝子があるのかなどの研究がすすめられています。

1型糖尿病

一般的に、1型糖尿病は遺伝しないと言われています。
しかし、1型糖尿病の発症リスクを高める遺伝子があることは解明されています。
一番関連が高い遺伝子はHLA遺伝子で、それ以外にもインスリン遺伝子、CTLA4遺伝子、PTPN22遺伝子などが報告されています。
1型糖尿病患者にはこれらの遺伝子を持っている人が多いことはわかっていますが、なぜ発症するのかは明らかになっていません。

1型糖尿病は日本人の0.01~0.02%に発症します。
しかし、親やきょうだいが1型糖尿病の場合は1~4%と高い確率で発症するため、発症率の差にはなんらかの遺伝子が関係していると考えられているのです。
さらに同じ環境で育ち同じ遺伝子をもつ一卵性双生児と、同じ環境で育ち異なる遺伝子を持つ二卵性双生児を比べた研究があります。一卵性双生児はどちらかが1型糖尿病を発症すると、二卵性双生児の7倍も1型糖尿病になりやすいことが報告されています。
従来は遺伝しないと考えられていた1型糖尿病も、医学の進歩で遺伝子の関連がわかってきました。
まだまだ多くの謎があり、人種が異なると原因となる遺伝子が異なる可能性も出てきています。
さらなる解明のために日夜研究が続いています。

MODY

MODYは常染色体優性遺伝で発症する2型糖尿病です。
現在、MODYの原因となる遺伝子は12~14種類解明されています。
これらの遺伝子は、膵臓β細胞の働きを維持するために欠かせない役割を担っています。
なんらかの理由で遺伝子の一部が変化し、膵臓β細胞の働きや機能が衰えMODYを発症するのです。
MODYには以下の特徴があります。

①25歳未満で糖尿病と診断される
②きょうだいの約半数に糖尿病をみとめる
③少なくとも3世代に糖尿病をみとめる

両親のうち1人がMODYだと、その子供は1/2以上の確率でMODYを発症することもわかっており遺伝する確率の高い糖尿病といえます。

糖尿病は遺伝子だけで発症する病気ではない

糖尿病患者に共通する遺伝子や、糖尿病になりやすい遺伝子の変異があることがさまざまな研究から明らかになっています。
しかし、どうしてその遺伝子が変異するのかや、遺伝する確率などは研究途中です。

親やきょうだいが糖尿病で自分も糖尿病を発症した方のなかには、糖尿病になりやすい遺伝子を持っているケースがあります。
しかし、糖尿病が発症する原因は遺伝子に限りません。
生活習慣や運動不足、偏った食生活、肥満などさまざまな要因が糖尿病発症リスクを高めます。
また、糖尿病になりやすい遺伝子を持っていないから、どのような生活をしても大丈夫というわけではありません。
糖尿病にならないために、バランスのよい食事・規則正しい生活・適度な運動を心がけてください。
同時に健康診断で血糖値・HbA1cをチェックし、糖尿病を早期発見・早期治療していきたいですね。

本コラムでは、糖尿病の基礎知識や治療・日常生活・医療費など、糖尿病と診断された患者さんやご家族の役立つ情報を発信しています。ぜひ、そのほかの記事もご参照ください。

参考文献

1)GCN2 regulates pancreatic β cell mass by sensing intracellular amino acid levels
Ayumi Kanno, … , Masato Kasuga, Yoshiaki Kido Published May 7, 2020
Citation Information: JCI Insight. 2020;5(9):e128820.

2)糖尿病原因遺伝子による2型糖尿病発症メカニズムを解明 神戸大学
https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2020_05_29_03.html#:~:text=EIF2AK4%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E3%81%AF2008%E5%B9%B4,%E3%81%8C%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

3)糖尿病と遺伝子 1.1 型糖尿病の遺伝子研究における進歩 能宗 伸輔 池上 博司 〔糖尿病 57(2):82~84,2014〕
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tonyobyo/57/2/57_82/_pdf/-char/ja

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