糖尿病の基礎~知識と注意点~

糖尿病は日本人の5人に1人がかかっている、とても身近な病気です。
糖尿病は気づかないうちに、あなたの体を蝕んでいるかもしれません。まずは糖尿病を正しく理解し症状や注意点を理解しましょう。

「糖尿病」ってどんな病気?

糖尿病は膵臓のインスリン分泌のコントロールが難しくなる病気です。
その結果血液中の糖分を分解できなくなり、体にさまざまな影響を与えます。
代表的な症状は、血液中の糖分の濃度が高くなる『高血糖』です。
高血糖は全身の血管や細胞にダメージを与えるため、心臓病や腎臓病・感染症・認知症のリスクが高くなります。

なぜインスリン分泌のコントロールができなくなるの?

インスリン分泌が調整できなくなる理由は大きくわけて以下の2つがあります。

①膵臓が働きすぎてこれ以上働けなくなる

膵臓の働きすぎが原因でおこる糖尿病の代表例は、2型糖尿病です。
暴飲暴食や糖質の過剰摂取は、慢性的な高血糖を招きます。
元気なうちは膵臓は頑張って働き続け、インスリンをどんどん分泌し血糖を下げます。
しかしその状態が長く続くと、いつの日かもう働けなくなってしまうのです。
働けなくなった膵臓からは、必要な量のインスリンは分泌されません。その結果、高血糖になり糖尿病を発症してしまいます。

②膵臓の病気でインスリンが分泌できなくなる

膵臓の病気が原因でおこる糖尿病の代表例は、1型糖尿病や膵性糖尿病です。
膵臓が働けなくなり、インスリン分泌が少なくなるため高血糖となり糖尿病を発症します。
実は、このほかにも糖尿病にはたくさんの種類があることが、医学が進歩したことで明らかになっています。
次は糖尿病の種類をもう少しくわしく見ていきましょう。

糖尿病の種類と特徴

インスリンの働きが悪くなり血液中の血糖値が高くなる糖尿病には、さまざまなタイプがあります。病名と特徴を紹介します。

病名 特徴
1型糖尿病 自分の免疫の異常で膵臓の細胞が破壊され、インスリンが出なくなる糖尿病。生活習慣では発症せず、小児~思春期頃に発症する患者が多い。急激に病状が進行する場合もある。患者の9割が自己免疫性、残りの1割は特発性(原因不明)。一般的には遺伝はしないが、特定の遺伝子を持っていると発症するリスクが上がる。
2型糖尿病 最も多い糖尿病のタイプ。インスリンが分泌されにくくなる遺伝的要因に加えて、生活習慣などの環境要因が作用し発症する。大人になって発症する人が多く、男性の方が多い傾向にある。 両親・兄弟に糖尿病患者がいると、発症リスクは2-4倍上がる。
妊娠糖尿病 妊娠して初めてわかった糖代謝異常。胎盤でインスリンが分解されるため、必要量のインスリンが分泌できないと発症しやすい。妊婦の12.8%に発症する。出産後は改善することが多い。
膵性糖尿病 膵臓の病気でインスリンが分泌できなくなる糖尿病。膵炎や膵がん、膵臓を切除するなどが原因のため遺伝はしない。
MODY
(maturity onset diabetes of the young)
遺伝子の変異が原因で若年齢で発症する糖尿病。肥満ではない25歳以上の糖尿病患者の11.5%を占める。家族や兄弟もMODYであることが多く2分の1の確率で遺伝する。
ミトコンドリア糖尿病 ミトコンドリアDNAの変異で発症する糖尿病。国内の糖尿病患者の約1%程度患者がいるといわれているが、見逃されているケースも少なくない。母方の家系のみに遺伝する可能性がある。約90%の患者に感音性難聴(耳の聞こえにくさ)を合併する。
二次性糖尿病 病気や薬の投与で発症する。病気には膵臓や内分泌系の病気だけでなく、遺伝子や免疫、感染症など多岐にわたる。
ステロイド糖尿病 ステロイド投与で発症する糖尿病。長期間投与すると発症するリスクがあがる。

「生活習慣が悪いからなる病気」は間違い

有酸素運動は酸素を取り込むことでエネルギーを作り出し、筋肉を動かす運動のことです。
有酸素運動では、ウォーキングやジョギング、サイクリングなどを通じて軽い負荷を長時間、筋肉にかけてカロリーを消費させます。
年齢に関係なく誰でも行える運動ですから、継続して行い肥満の防止に努めましょう。
ちなみに、有酸素運動では遅筋、または赤筋と呼ばれる筋肉を主に使いますが、この筋肉は後述するレジスタンス運動に比べて脂肪を燃焼しやすい構造になっています。

レジスタンス運動

糖尿病というと「暴飲暴食だから発症する」「太っているから……」など『生活習慣が悪いからなる病気』というネガティブなイメージを持つ人が少なくありません。
けれども、その認識は間違いです。 実際は若くて太っていない人が多いMODYの患者さんや、他の病気や薬が原因で発症する患者さんがいます。
身近に糖尿病患者さんがいる方は、ネガティブなイメージや偏見をもたないことが大切です。

突然発症することも……

1型糖尿病やMODYなどは、ある日突然体調を崩し高血糖や尿糖を指摘されて診断されるケースが少なくありません。
生活習慣に注意していても、ある日突然発症するリスクがあるのが糖尿病の怖いところなのです。

糖尿病の診断基準

糖尿病は高血糖の状態が確認されるだけでなく、症状や病歴・家族の病気やいままでの体重の変化をもとに総合的に診断されます。 以下が糖尿病の診断基準です。
①血糖値やHbA1cが基準値を超えていることを、2回確認できた場合
②血糖値が基準値を1回超えているか、のどの渇き・水分をたくさん飲む・体重が減るなどの症状や糖尿病性網膜症がある場合
③いまは糖尿病の基準値を満たさないが、過去に糖尿病と診断された場合

また、血糖値やHbA1cによっては「糖尿病の疑い」となったり「再検査」が必要となったりします。

引用:糖尿病診断の指針 P6 糖尿病診療ガイドライン2019
再検査や糖尿病疑いの方は、糖尿病の可能性がとても高くなっています。
糖尿病の早期発見・治療のために、定期的に医療機関を受診しましょう。

糖尿病の症状

糖尿病はどのような症状があるのでしょうか?ポイントを2つ解説します。

初期は自覚症状がない

糖尿病の初期は自覚症状がありません。
血糖値が高くなった状態が続くと、のどが渇いたり、トイレが近くなったりします。
そのほかに傷が治りにくい、疲れやすい、だるい、眠いなどの症状があります。
血糖値が高くなりすぎると意識をなくして倒れてしまうこともある恐ろしい病気です。
また、自覚症状が出る頃には心臓や腎臓、目や神経などに合併症を起している可能性がとても高くなります。
糖尿病は自覚症状がない早期に発見し、症状の悪化をふせぐことがとても重要なのです。

尿が「甘いにおい」「泡立つ」のは重症糖尿病のサイン

SNSやテレビなどで糖尿病の人の尿は甘いにおいがする、泡立つという話を見聞きしたことがあるかもしれません。
一般的に尿の糖分が多くなると、甘いにおいがする可能性があります。
ただし尿のにおいは食事や水分摂取の影響をうけやすく、個人差も大きいため気づかない人も少なくありません。
さらに尿の泡立ちは、尿の糖分やたんぱく質が多くなることが原因です。
これらの症状は重症化した糖尿病患者によくみられるため、症状に気づいたら早めの受診と精密検査が必要です。

糖尿病の治療

糖尿病は「治る病気」ではなく「上手に付き合っていく病気」です。
治療には膵臓の負担を軽減する「食事療法」「運動療法」と不足するインスリンを補ったり、残っている膵臓の働きをサポートしたりする「薬物療法」があります。
それぞれの治療は血糖値やHbA1c を目標値内にコントロールし、合併症を防ぐためにおこなわれます。
血糖コントロール目標となるHbA1c値は以下です。

引用:糖尿病治療の目標と指針 P25 糖尿病診療ガイドライン2019

食事療法

食事療法は2型糖尿病の患者さんにおこなわれる治療方法です。
総エネルギー摂取量を適正にし、インスリンの供給と消費のバランスを整えます。自己判断でおこなうのではなく、医師や栄養士の指示のもとバランスのとれた食生活を目指しましょう。

運動療法

2型糖尿病患者に運動療法はとても有効です。
血糖コントロールを改善し、インスリンを効きやすくしたり、肥満を改善したりする効果が期待できます。 糖尿病網膜症や糖尿病性腎症、心臓病、足の傷がある患者さんは、運動療法で病状を悪化させる危険性があります。
あらかじめ主治医に相談しましょう。

薬物療法

薬物療法には以下の2種類があります。

内服薬

内服薬は血糖値を下げる薬や、残っている膵臓の働きをサポートしインスリン分泌を改善する薬、糖を尿として排泄する薬などさまざまな種類があります。
患者さんの病状に合わせて 複数の薬を組み合わせて使用するケースもあります。

注射薬

注射薬には「GLP-1受容体作動薬」と「インスリン製剤」の2種類があります。
GLP-1受容体作動薬は膵臓にインスリン分泌を促すように働きかけます。
1日1~2回もしくは週1回注射し、インスリンと併用する場合もあります。
インスリン製剤はインスリンを注射器やビンに詰めて投与するものです。
一般的には1日1~4回投与しますが、1型糖尿病患者さんはインスリンポンプというスマートフォンの半分くらいの大きさの機械で24時間持続的にインスリンを投与することもあります。
インスリン製剤は短時間〜長時間まで作用時間の異なる製剤が多数あり、組み合わせて血糖コントロールをおこないます。

糖尿病は誰でも発症するリスクがある

糖尿病はさまざまな原因で発症します。発症初期は自覚症状がないので、気づかないうちに重症化する危険性がある病気です。
糖尿病の重症化や合併症を防ぐためにも、糖尿病の正しい知識を持ち早期発見と早期治療に務めていきたいですね。
本コラムでは、糖尿病の基礎知識や治療・日常生活・医療費など、糖尿病と診断された患者さんやご家族の役立つ情報を発信しています。
ぜひ、そのほかの記事もご参照ください。

参考文献

1)糖尿病 一般社団法人日本内分泌学会
http://www.j-endo.jp/modules/patient/index.php?content_id=11
2)糖尿病診療ガイドライン2019
http://www.jds.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=4
3)国立国際医療研究センター 血糖値を下げる注射薬
http://dmic.ncgm.go.jp/general/about-dm/100/030/03.html

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